資格の王様

16日商簿記検定試験

1.日商簿記検定試験とは

日商簿記検定試験は、企業活動に不可欠な「会計」や「経理」に関する基本的な知識と技能を客観的に評価する資格試験です。日商簿記は、初学者から実務者まで広く利用されており、ビジネスパーソンにとっては基本中の基本とされる検定です。

企業の経理部門や会計事務所などでは、日商簿記の資格取得が採用や昇進の条件になっていることも多く、特に2級以上の取得は実務に直結するスキルを証明するものとして高く評価されています。

本試験は1級・2級・3級・初級に分かれており、学習の進度や目的に応じて段階的に挑戦することができます。加えて、1級は国家資格である「税理士」試験の受験資格としても認められており、会計の専門家を目指す第一歩ともいえる検定です。

2.受験資格

日商簿記検定試験は、学歴・年齢・職歴・国籍などに関係なく、どなたでも受験できます。受験級の制限もなく、3級を受けずにいきなり2級や1級からの受験も可能です。

ただし、各級には想定される学習レベルがあります。

初級:会計の入門者向け(主に高校生や初学者)

3級:商業簿記の基本を学ぶ初級者向け(高校・専門学校レベル)

2級:商業簿記および工業簿記の理解が必要な中級者向け(企業経理の実務に対応)

1級:上場企業等の経理業務を見据えた上級者向け(大学専門課程相当)

資格取得にあたっては、まず3級や2級から段階的に受験することが一般的です。

3.試験日程(例年のスケジュール)

日商簿記検定試験は、全国の商工会議所で年3回(6月・11月・2月)実施されています。1級は年2回(6月と11月)ですが、2級・3級は年3回実施され、さらに「ネット試験方式」の導入により、2級・3級については随時受験も可能となっています。初級はネット試験のみです。

【ペーパー試験(統一試験)】

実施月:6月中旬・11月中旬・2月下旬(1級は6月・11月のみ)

【ネット試験】

会場:全国のテストセンター(CBT方式)

実施:通年実施(原則として事前予約制)

ネット試験は、会場でのコンピューター受験となり、試験結果もその場で確認することができます。仕事や学業の都合でペーパー試験のスケジュールに合わない場合には、ネット試験が非常に便利です。

4.試験地

日商簿記検定のペーパー試験は、全国各地の商工会議所が試験実施団体となり、地域の公共施設や会議室、大学等で行われます。お住まいの地域の商工会議所に申し込むことで、身近な会場で受験することができます。

日一方、ネット試験は、各地のテストセンターで全国規模で実施されており、都市部だけでなく地方にも複数の会場があります。パソコン操作に慣れている方であれば、ネット試験による受験もスムーズです。

5.受験料

1級:8,800円(税込)

2級:5,500円(税込)

3級:3,300円(税込)

初級:2,200円(税込)

6.試験内容(詳細)

日商簿記検定の内容は、級によって異なります。各級の試験内容と出題傾向、学習のポイントは以下の通りです。

(1)初級(ネット試験のみ)

【形式】CBT方式(選択式・入力式)

【試験時間】40分

【出題範囲】

簿記の基本概念

仕訳の基礎

会計の流れの理解

【合格基準】100点満点中70点以上

初級は、簿記の超入門編として設定されており、これから会計を学ぶ中学生・高校生や文系大学生に適した内容となっています。

(2)3級

【形式】筆記式(またはネット試験)

【試験時間】60分

【出題範囲】

商業簿記の基礎(仕訳・帳簿記入・試算表)

決算整理・精算表・財務諸表(損益計算書・貸借対照表)

【合格基準】70%以上

3級は、個人商店や小規模企業の経理業務を想定した内容です。仕訳を中心とした処理能力と決算までの流れの理解が問われます。

(3)2級

【形式】筆記式(またはネット試験)

【試験時間】90分

【出題範囲】

商業簿記(中堅企業レベルの会計処理)

工業簿記(製造業の原価計算)

第1問:仕訳問題(商業簿記)20点

第2問:補助簿・伝票・勘定記入など(商業簿記)20点

第3問:精算表や財務諸表の作成(商業簿記)20点

第4問:基本的な原価計算や勘定記入(工業簿記)20点

第5問:総合原価計算・部門別計算などの応用問題(工業簿記)20点

【合格基準】70%以上

企業の経理担当者が日常的に対応する処理をカバーしており、即戦力となる実務能力が求められます。2級からは難易度が一気に上がり、試験範囲の広さと計算スピードが合格の鍵を握ります。

(4)1級

【形式】筆記式(年2回)※ネット試験はありません

【試験時間】

商業簿記+会計学:90分

工業簿記+原価計算:90分

【出題範囲】

商業簿記(連結会計・外貨建取引など含む)

会計学(会計基準・理論記述)

工業簿記(原価計算・工程別計算など)

原価計算(計算+理論)

【合格基準】70%以上 ただし、1科目ごとの得点は40%以上

1級では、大学商学部レベルの内容が出題されます。理論と計算の両面から深い理解が求められ、合格率は毎回10%前後と非常に低くなっています。財務会計・管理会計の両方に強くなる必要があり、計画的な長期学習が不可欠です。

また、日商簿記1級の合格者は、税理士試験の受験資格を得ることができます。これにより、さらに上位の国家資格への道も開けてきます。

7.合格後の流れと研修

日商簿記検定は、合格後に特定の研修や登録制度はありません。合格者には、各級ごとに「合格証書」が交付され、自身のスキルを証明する手段となります。

2級・1級の合格は、就職・転職活動の履歴書に記載するだけでなく、企業からの信頼性が高いため、経理職などの応募条件として明記されることも少なくありません。また、企業研修や昇進条件として、社内で取得が義務づけられている場合もあります。

8.資格取得のメリット

日商簿記検定は、以下のような多くのメリットがあります。

就職・転職に強い:特に2級以上は、経理・会計職への採用で有利に働きます。

実務に直結:企業経理の実務を体系的に学ぶことができ、即戦力として評価されます。

ビジネス基礎力が身につく:簿記を学ぶことで、企業の仕組みや数字の動きを理解できます。

国家資格へのステップ:1級合格で税理士試験の受験資格が得られ、上級資格への道が開かれます。

学生から社会人まで幅広く活用:商業高校生や文系大学生にも人気があり、資格取得で自己アピールが可能です。

9.まとめ

日商簿記検定試験は、ビジネスの現場で必要とされる「お金の流れを理解する力」を身につけるための最適な資格試験です。3級で簿記の基本を学び、2級で実務力を高め、1級で専門性を磨くという段階的なステップが用意されており、学習目的やキャリアプランに応じて柔軟に取り組むことができます。

試験方式も従来のペーパー試験に加え、ネット試験の導入により、より受験しやすくなっています。社会人にとっては業務に直結するスキルの習得手段として、学生にとっては就職活動の武器として、日商簿記の資格は大きな力を発揮することでしょう。

10.ホームページ

日本商工会議所

https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping