21労働法務士認定試験
1.労働法務士認定試験とは
労働法務士認定試験は、労働法に関する専門的な知識と実務対応力を体系的に評価する資格試験です。労働基準法、労働契約法、労働組合法、労働安全衛生法、育児・介護休業法など、多岐にわたる労働関連法規を横断的に理解し、企業現場での労務管理や法務対応に活かすことを目的としています。
現代の労働環境は、働き方改革や同一労働同一賃金制度、労働時間規制、ハラスメント防止法制など、変化と拡充を続けています。企業が法令遵守を徹底し、適切な人事労務運営を行うためには、専門知識を備えた人材が不可欠です。労働法務士認定試験は、こうした社会的な要請に応える形で設けられており、法務部門や人事部門、あるいは総務や管理職の方にとって非常に有用な資格となっています。
2.受験資格
労働法務士認定試験には受験資格の制限がありません。学歴や職歴を問わず、どなたでも受験することができます。社会人だけでなく、学生や労働法を学び始めたばかりの方も挑戦可能です。特定の実務経験は必要ないため、労働法分野への入門資格として適しています。また、法学部卒業生や社会保険労務士など、すでに労働法を扱っている方にとっても、知識の再整理や学び直しの機会として活用できます。
3.試験日程
例年6月、9月、翌年3月に開催されることが多く、年間複数回の受験機会があります。出願期間は試験日のおおむね1か月前までに設定されており、受験者は自身の学習状況や業務予定に合わせて受験時期を選択できます。
4.試験地
試験は東京、名古屋、大阪、福岡など全国主要都市で実施されます。さらに、CBT方式(テストセンターでの受験)やIBT方式(自宅からのオンライン受験)にも対応しているため、地域や状況に応じて受験形態を選ぶことができます。この柔軟な受験環境により、全国どこに住んでいても受験しやすい点が大きな特徴です。
5.受験料
受験料は16,500円(税込)です。学生については学割制度があり、13,200円(税込)で受験できます。CBT方式を利用する場合には、別途2,000円(税込)の会場費が必要です。
6.試験内容(詳細)
試験は労働法全般を対象としており、主に以下の分野から出題されます。
労働法総論
労働法の意義や歴史、憲法における勤労権や労働三権、国際労働基準との関係を扱います。
雇用関係法
労働契約の成立・変更・終了、就業規則の作成と変更、解雇や懲戒、賃金・労働時間・休日・休暇制度を中心に出題されます。育児休業、介護休業、妊産婦保護など、近年注目される分野も含まれます。
労働安全衛生法関係
職場の安全管理体制や衛生委員会、安全配慮義務、健康診断の実施、過労死やメンタルヘルス対策など、労働者の安全と健康に関わる規制を問います。
労災補償制度
労災保険制度に基づく業務災害・通勤災害の認定、給付内容や請求手続き、企業の補償責任の範囲が出題されます。
労使関係法
労働組合の権利、団体交渉、団体行動、不当労働行為の禁止など、労使関係の根幹をなす制度が中心です。労働関係調整法も範囲に含まれます。
雇用保障法制
雇用保険制度、雇用調整助成金、再就職支援など、雇用の安定や継続に関する制度について出題されます。
労働紛争解決制度
労働審判制度やあっせん・調停、ADR、裁判による救済手段など、労働紛争を解決する仕組みを問います。
その他関連法規
男女雇用機会均等法、障害者雇用促進法、高年齢者雇用安定法などの周辺法規も出題範囲に含まれます。
試験はマークシート形式で60問程度が出題され、試験時間は150分です。合格基準は70%以上の正答率とされています。問題は条文の知識だけでなく、判例や実務的な判断を踏まえた理解を求める設問が多く、労務管理の現場に即したケーススタディ形式の出題も行われます。知識を単に暗記するだけではなく、実際に活用できる力が問われる点が特徴です。
7.合格後の流れと研修
合格者には認定証が交付されます。合格後は労働法務士として活動することが可能ですが、さらに知識を深めるために、労働法務士資格者部会に加入し、継続的な研修や学習に参加することが推奨されています。資格者部会では、最新の法改正や判例動向に関するセミナーや講座が開催され、ビデオ教材や模擬試験を通じた自己研鑽の機会も提供されています。これにより、知識を最新の状態に保ち、実務に直結するスキルを継続的に強化することができます。
8.資格取得のメリット
労働法務士認定試験に合格する最大のメリットは、労働法を包括的に理解し、実務に応用できる力を備えられる点にあります。企業においては、労務トラブルの未然防止や適正な労働条件整備、就業規則の適法な運用に役立ちます。人事担当者や管理職がこの資格を持つことで、組織全体のコンプライアンス意識を高めることができ、従業員の安心感や信頼感にもつながります。
また、資格を有することで、社内外における専門性が認められ、キャリア形成や昇進・転職の際にも有利になります。労務管理に強い人材としての評価を得られるため、雇用市場での競争力を高めることにも直結します。さらに、社会保険労務士や司法試験といったより高度な資格取得を目指す際の基盤としても有効に機能します。
9.まとめ
労働法務士認定試験は、労働法全般を横断的に学び、実務に直結する知識を身につけられる資格試験です。受験資格に制限がなく、誰でも挑戦できる点が大きな魅力であり、初学者から実務経験者まで幅広く受験することができます。試験は全国の主要都市やオンラインで実施され、社会人が仕事と学習と両立しながら受験することにも適しています。
出題範囲は労働基準法や労働契約法といった基本法制にとどまらず、安全衛生や労災補償、労使関係、雇用保障、紛争解決手続など多岐にわたります。条文の暗記に加え、判例理解や実務判断を求めるため、合格者は現場で即戦力となる力を備えることができます。
合格後には資格者部会や研修制度を通じて最新の知識を学び続けることができ、専門性を持った人材として社会的に高い評価を受けることが可能です。労働法務士認定試験は、複雑化する現代の労働環境において、法令遵守と適正な労務管理を実現するための大きな支えとなる資格といえるでしょう。
10.ホームページ
一般財団法人 全日本情報学習振興協会

