35ITパスポート試験
1. ITパスポート試験とは
ITパスポート試験(通称:iパス)は、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験の一つで、情報処理技術者試験の中でも最も基礎的なレベルに位置づけられています。本試験は、ITに関する基本的な知識を有し、業務においてITを適切に活用できる能力を測ることを目的としています。企業活動や日常業務のなかでITが広く活用されている現代において、職種や業種にかかわらず、多くの人々に求められる「ITリテラシー」を国家が証明する制度といえます。
試験の出題範囲は情報技術にとどまらず、経営戦略や会計、法務といったビジネスに必要な知識領域も含まれており、ITに不慣れな文系出身者や学生でも無理なく学習できるよう配慮された内容となっています。また、CBT方式を採用し、全国の試験会場で随時受験できる仕組みが整えられているため、自分の学習状況やライフスタイルに合わせて計画的に受験することができます。
2. 受験資格
ITパスポート試験には、年齢・学歴・職業などに関する制限は一切なく、誰でも受験することが可能です。高校生や大学生はもちろん、社会人やシニア層に至るまで、幅広い層の受験者に開かれた国家試験である点が特長です。
3. 試験日程
ITパスポート試験は、CBT方式により、全国各地にある指定試験会場において、通年で実施されています。受験者は、希望する日時や地域を選んで申込み、受験することができます。各会場の空席状況に応じて、思い立ったときにすぐ挑戦できる点が大きな魅力です。
一方、障害のある方向けに春期と秋期に筆記方式の試験が実施されており、会場・日程は事前に公表されます。これにより、すべての人に対し、学びと挑戦の機会が等しく保障されています。
4. 試験地
CBT方式で、全国47都道府県のテストセンターで実施しています。試験会場は、受験申込手続の中で選択できます。また、一部の試験会場では、車椅子で受験できます。詳細については、ホームページの一覧ページをご参照ください。
5.受験手数料(税込)
7,500円
6. 試験内容
ITパスポート試験の出題は、主に以下の3分野から構成されています。
(1)ストラテジ系(経営・法務など)
この分野では、企業活動の基本的な枠組み、経営戦略、会計・財務、法務、知的財産権など、ビジネスに関連する幅広い知識が問われます。ITを理解するだけでなく、ビジネス全体の中でのITの役割や活用方法を考える力が求められます。
(2)マネジメント系(開発管理・プロジェクト管理など)
システム開発の流れ、プロジェクトマネジメントの手法、ITサービスの提供と運用、システム監査などについて出題されます。ITを「使う側」の立場として、情報システムの導入や運用のマネジメントを理解するための基本的な知識が問われます。
(3)テクノロジ系(情報技術全般)
コンピュータの構成、ネットワーク、データベース、セキュリティ、プログラミングなど、情報技術の基礎的な部分に関する知識が中心です。特に近年では、情報セキュリティやAI、IoTなど新しい技術に関する出題も増加傾向にあります。
試験は四肢択一式で、全100問が出題され、試験時間は120分です。合格基準は、総合評価で600点以上(1,000点満点)、かつ各分野ごとに300点以上の得点が必要です。
7. 合格後の流れ
受験月の翌月中旬から下旬に公式サイト上で合格発表が行われます。合格者には、「情報処理技術者試験合格証書」が交付され、簡易書留で送付されます。合格に有効期限はなく、いったん合格すれば、生涯にわたってその資格は有効です。
8. 資格取得のメリット
ITパスポート試験に合格する最大のメリットは、IT社会で働くうえで必要となる基礎知識を身につけていることを国家資格として証明できる点にあります。具体的には、合格の過程で学ぶことで、IT技術だけでなく、経営戦略、会計・財務、法務、情報モラル・セキュリティといったビジネス知識が広くバランスよく身につきます。これにより、システム担当以外の部署でも、IT部門や外部ベンダーとの意思疎通が円滑になり、業務改善や効率化の提案力が高まる可能性があります。
また、企業レベルでは、社員がITリテラシーを備えることで、組織全体のIT活用力・コンプライアンス強化につながります。特に、情報漏えいや不正アクセス、個人情報管理といったリスクを軽減する点で、企業にとっても価値があります。多くの企業が、新入社員研修や社員教育にiパスを導入しているのも、この背景があるからです。
加えて、就職・進学時のアピール材料になるというメリットもあります。履歴書や面接で「基本的なIT知識を備えている」ことを示せるため、文系や非IT系職種の受験者にも有利になることがあります。さらに、大学によっては入試優遇や単位認定を行う制度を導入しているところもあります。
最後に、ITパスポート試験は受験資格制限がなく誰でも受験でき、随時受験可能な CBT 方式を採用しているため、自分のペースで学び、挑戦しやすい点も大きな魅力といえます。
9. まとめ
ITパスポート試験は、単なるIT技術者向けの資格ではなく、現代のあらゆるビジネスパーソンに求められる「ITリテラシー」を証明する国家試験として、高い汎用性と信頼性を誇ります。試験範囲は経営・法務からIT技術・管理にまで及び、社会で必要とされる総合的な知識を体系的に学ぶ機会を提供してくれます。
受験資格に制限がないため、学生、社会人、再就職を目指す人など、誰にとっても有益な学習とステップアップのきっかけとなり得るでしょう。また、随時受験可能な柔軟な仕組みにより、自分のペースで挑戦できることも魅力の一つです。
これからの時代、業務の効率化やデジタル化がますます進展するなかで、ITに関する基本的な理解と活用力は不可欠です。ITパスポート試験は、その第一歩を踏み出すにふさわしい登竜門として、今後も多くの人に支持され続けることでしょう。
10.ホームページ
独立行政法人 情報処理推進機構

