資格の王様

36基本情報技術者試験

1. 基本情報技術者試験とは

基本情報技術者試験(FE:Fundamental Information Technology Engineer Examination)は、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験であり、情報処理技術者試験制度の中核をなす試験の一つです。経済産業省の「情報処理の促進に関する法律」に基づき設けられており、ITエンジニアとしてのキャリアの出発点として、広く活用されています。

本試験は、ソフトウェアやネットワーク、セキュリティといった情報技術に関する知識だけでなく、企業経営やプロジェクト管理などのマネジメント領域や、経営戦略・法務に関する内容も問われるなど、総合的なビジネススキルが求められる内容となっています。システム開発や運用に携わる初級技術者だけでなく、ITの知識を業務に活かしたい一般ビジネスパーソンにとっても、有用な資格として位置づけられています。

2. 受験資格

基本情報技術者試験には、年齢、学歴、職歴、国籍などに関する受験制限は一切ありません。どなたでも受験が可能です。高校生や大学生、社会人、主婦、シニア層まで幅広い層が受験しており、IT分野への第一歩として人気があります。

また、IPAが認定する講座を修了した者には、受験申込時に「科目A」の試験が免除される制度もあります。この制度を利用することで、より実践的なスキルに重点を置いた受験が可能となるため、職業訓練校や専門学校などでも活用されています。

3. 試験日程(例年のスケジュール)

2023年度以降、基本情報技術者試験はCBT方式へと完全移行しました。これにより、従来の年2回(春期・秋期)実施という枠組みから、通年で随時受験が可能な形式に変更されています。受験者は、全国の指定試験会場の中から、自身の都合に合わせた日時を選んで受験することができます。

ただし、視覚や聴覚等に障害がありCBT方式による受験が困難な方を対象に、春期と秋期には従来の筆記方式による特別措置試験が用意されています。これにより、誰もが平等に試験を受けられる環境が整備されています。

4. 試験地

CBT方式での実施となって以降、全国の都市に設置されたテストセンター(民間の受託事業者が運営)にて受験が可能となっています。北海道から沖縄まで、多くの地域に試験会場があり、居住地や勤務先の近隣で受験することができます。

一方、筆記方式の特別措置試験は、主要都市に限られた会場で実施されます。会場は年度ごとに発表されるため、該当する方はIPA公式サイトで確認する必要があります。

5.受験料(税込)

7,500円

6. 試験内容(詳細)

試験は「科目A(知識問題)」と「科目B(実践問題)」の二部構成となっており、それぞれの試験において600点以上(1000点満点)が合格基準となります。どちらか一方だけではなく、両科目で基準を満たす必要があります。

科目A:知識問題(90分)

  • 出題形式:多肢選択式(四肢択一)
  • 出題数:60問(評価対象54問+参考6問)
  • 出題分野:テクノロジ系(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データベース、セキュリティなど)
    マネジメント系(システム開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメントなど)
    ストラテジ系(企業活動、法務、経営戦略、技術戦略、ビジネスインダストリなど)
  • 科目B:実践問題(100分)

  • 出題形式:多肢選択式(長文読解を伴う問題が中心)
  • 出題数:20問(評価対象19問+参考1問)
  • 出題分野:
    アルゴリズムとプログラミング(擬似言語を用いた出題が中心)
    セキュリティに関する実践的な問題
  • 特に科目Bでは、ソート処理やデータ構造に関するアルゴリズム問題、仕様を読み取って正しい動作を選ぶ読解力、セキュリティリスクの分析など、実務を意識した応用力が問われます。

    7. 合格後の流れと研修

    合格者にはIPAより「合格証書」が交付され、合格実績は履歴書などに記載することが可能です。資格自体に有効期限はなく、一度取得すれば更新の必要はありません。

    また、合格によって一部の大学・短大・専門学校で単位認定を受けられることがあり、教育機関におけるIT科目の履修評価として活用されるケースもあります。さらに、上位資格である「応用情報技術者試験」や、高度区分試験への登竜門的な位置づけとなっており、国家資格のステップアップにもつながります。

    企業によっては資格手当の対象とされており、新卒採用時や社内昇進・異動の条件となることもあります。IPAや自治体、大学等が主催する講習・研修もあり、合格後の継続的な学習も支援されています。

    8. 資格取得のメリット

    基本情報技術者試験の最大の利点は、体系的に整理された情報技術の知識を習得できる点にあります。テクノロジからマネジメント、ストラテジまで広範囲な内容をカバーすることにより、IT技術者だけでなく、ITを活用する一般社員や企画職、管理職にとっても有用な知識基盤を構築することができます。

    また、IT分野の国家資格という信頼性に加え、合格率は近年のCBT方式導入後、約40〜50%前後で推移しており、努力次第で十分に合格が狙える資格です。職種や業種を問わず、デジタル社会における基本リテラシーとして企業からも高い評価を得ています。

    特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められる現在、業務プロセスの改善や新たな価値創出において、ITの基本知識を有する人材の価値はますます高まっています。

    9. まとめ

    基本情報技術者試験は、情報技術に関する総合的な能力を証明する国家資格として、非常に高い信頼性と実用性を兼ね備えています。受験資格に制限がないことから、学生から社会人、未経験者から現場の実務者まで、誰もが挑戦できる開かれた試験です。

    試験内容は知識系と実践系の両面から構成されており、学習を通じてITの理論と応用力の両方をバランスよく身につけることができます。合格後はキャリア形成の一助となり、上位資格への挑戦や、社内外での評価向上にもつながるなど、多様なメリットが期待できます。

    情報化が進む社会において、ITに関する素養はあらゆる業種・職種において不可欠なものとなりつつあります。基本情報技術者試験は、まさにそのような時代のニーズに応える資格として、今後ますますの重要性を増していくことでしょう。

    10.ホームページ

    独立行政法人 情報処理推進機構

    https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/fe.html