52全国通訳案内士試験
1.全国通訳案内士試験とは
全国通訳案内士試験は、全国通訳案内士として必要な知識と技能を有するかどうかを判定する国家試験です。実施は観光庁が定め、試験業務の代行は日本政府観光局(JNTO)が担っています。かつて通訳案内業は資格独占でしたが、現在では資格がなくても有償で業務が可能となった一方、無資格者は「全国通訳案内士」及びこれに類する名称を名乗ることができない「名称独占資格」となっています。
2.受験資格
全国通訳案内士試験には、年齢・性別・学歴・国籍などによる制限は一切ありません。すべての人に門戸が開かれている国家試験です。
3.試験日程(例年のスケジュール)
試験は年に1回実施され、近年の傾向は以下の通りです
ガイドライン公開:4月初旬
官報公示・施行要領公開:4月下旬〜5月
願書受付(電子申請):6月〜7月上旬
筆記試験(第1次):8月中旬(日曜日)
筆記試験結果発表:9月下旬
口述試験(第2次):12月中旬(日曜日)
最終合格発表:翌年2月上旬(官報およびマイページ)
4.試験地
筆記試験:札幌、仙台、東京近郊、名古屋、大阪近郊、広島、福岡、沖縄
口述試験:英語・中国語・韓国語は東京近郊・大阪近郊・福岡のいずれか、その他言語は東京近郊のみ
5.受験手数料
15,345円(一か国語受験の場合)
30,686円(二か国語受験の場合)
6.試験内容(詳細)
(1)構成
試験は筆記(第1次)と口述(第2次)の二段階で構成されています
筆記試験(マークシート方式)
全5科目・1日で実施:
外国語(英語など10言語から選択)――90分
日本地理――30分
日本歴史――30分
一般常識(産業・経済・政治・文化)――20分
通訳案内の実務――20分
口述試験
通訳案内の実務に関する実践的能力を評価:
日本語→選択外国語への翻訳と質疑応答
テーマ提示によるプレゼンテーション+質疑応答
(2)配点・合格基準
筆記試験の合格基準点(2024年度):
外国語/日本地理/日本歴史:各100点、基準点70点
一般常識/通訳案内の実務:各50点、基準点30点
調整の可能性あり:平均点が基準点から著しく乖離した場合、合格基準の見直しが行われることがあります。
(3)出題形式
すべてマークシート(多肢選択式)。特定科目には図表も含まれることがあります。
(4)口述試験
7.合格後の流れと研修(加筆後)
合格後の登録手続き
まず、全国通訳案内士試験に合格した後は、各都道府県へ登録申請を行い、「全国通訳案内士」としての登録を受けなければ正式に資格取得とはなりません。これにより、通訳案内士として活動する法的な立場が付与されます(既出)。
研修制度:5年ごとの法定研修の義務化
合格・登録後も、全国通訳案内士として継続して質を維持するための仕組みとして、法令に基づいた研修の受講が義務づけられています。その概要は以下の通りです:
改正通訳案内士法(2018年1月4日施行)により、全国通訳案内士は5年に1度、登録研修機関(観光庁長官登録の機関)が実施する「通訳案内研修」(法定研修)を受講しなければならないと定められました。
登録研修機関とは、観光庁から登録を受け、旅程管理や災害対応など、実務に直結する研修を正規に実施できる団体のことです。
研修内容の例として、旅程管理、危機管理、最新の法制度への対応などが法定科目として含まれます。
受講頻度と期限:
初回の受講期限は、登録時期により異なりますが、2018年1月4日よりも前に登録されている方は、2023年1月3日までが初回の受講期限です。
それ以降の受講は、前回の受講日から5年以内に次回受講が必要となります。
受講しない場合のペナルティ:法定研修を期限内に受講しなかった場合、都道府県が当該通訳案内士の登録を取消し(抹消)、取消し後2年間は再登録できないという措置が定められています。
つまり、この研修制度は、全国通訳案内士の最新知識と実務対応能力を常に維持・向上させるための法定義務として機能しており、研修の未受講は資格喪失につながる重大な要件となっています。
8.資格取得のメリット
「民間外交官」的役割:外国人旅行客に日本の歴史・文化・観光資源を伝える国家資格として注目されています。
高度な専門性証明:語学力だけでなく、日本全体に関する知識が求められ、信頼性が高い資格として評価されます。
再就職・観光業界での優位性:通訳案内業以外にも観光政策やインバウンド関連業務での活用が可能です。
合格率(例):2023年度全体では約12%と難関。英語では12.9%の合格率。
9.まとめ
全国通訳案内士試験は、日本の文化・歴史・地理など広範な知識と外国語運用力を兼ね備えた、唯一の国家試験「通訳ガイド資格」です。学歴・年齢・国籍に制限がなく、誰でも挑戦できる公平な仕組みとなっています。
試験は筆記(5科目)と口述で構成され、筆記試験は8月中旬、口述は12月中旬、合格発表は翌年2月という流れ。すべての手続きは電子申請・マイページ経由で行われ、書面郵送は不要です。
科目ごとに厳格な基準が設けられており、特に外国語・地理・歴史は100点中70点、一般常識や通訳実務は50点中30点が目安点です。観光庁の公式研修テキストが出題範囲として指定され、実務的知識も必要とされます。
合格後は都道府県への登録により「全国通訳案内士」として活動可能になり、民間外交とも言われる役割を担い、観光業界や国際交流の現場で信頼性の高い専門性として活かせる貴重な資格です。
10.ホームページ
日本政府観光局
https://www.jnto.go.jp/projects/visitor-support/interpreter-guide-exams/

