53国家公務員一般職試験(大卒程度試験)
1.国家公務員一般職試験(大卒程度試験)とは
国家公務員一般職試験(大卒程度試験)は、人事院が実施する国家公務員採用試験の一つであり、政策の実行やフォローアップなどに関わる事務を担う係員を採用するために行われます。主として各府省庁や地方出先機関で勤務する人材を対象にしており、行政分野だけでなく、デジタル・電気電子、機械、土木、化学、農学、林学など、理系の幅広い専門区分も設けられています。
この試験は、国家公務員として必要な基礎的知識や専門能力、さらに文章表現力や人物面を評価するものであり、筆記試験と人物試験を経て最終的な合格が決定されます。大卒程度と称されていますが、実際には大学卒業見込み者や短大・高専卒業者も受験可能であり、幅広い層が受験しています。
2.受験資格
受験資格は「教養」区分とそれ以外の区分で若干異なります。
「教養」以外の区分
1995年4月2日~2004年4月1日生まれの者、または2004年4月2日以降に生まれ、大学や短期大学、高等専門学校を卒業(見込み)または人事院が同等と認めた者。
「教養」区分
1995年4月2日~2005年4月1日生まれの者、または2005年4月2日以降に生まれ、大学や短期大学、高専卒業(見込み)または人事院が同等と認めた者。
ただし、日本国籍を有しない者、禁錮以上の刑を受けた者、懲戒免職から一定期間を経過していない者、暴力的破壊活動を主張する団体に属する者などは受験できません。
3.試験日程(例年のスケジュール)
2025年度を例にとると、次のようなスケジュールで実施されます。
申込期間:2月20日~3月24日(インターネット申込)
第1次試験:6月1日(筆記試験中心)
第1次合格発表:6月25日
第2次試験(人物試験):7月9日~7月25日(平日実施)
最終合格発表:8月12日
このスケジュールは毎年度おおむね同時期に実施されており、春に申し込み、初夏に筆記試験、夏に面接と合格発表という流れが定着しています。
4.試験地
第1次試験は全国の主要都市で実施され、受験者は便宜に応じて希望都市を選択できます。例えば、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇などが指定されています。
第2次試験地は、区分ごとに指定の地域で実施され、「行政」「教養」区分の場合は採用希望地域に対応する都市、「技術系区分」の場合は第1次試験地に対応する都市で受験することとなります。
5.試験内容(詳細)
試験は大きく「行政区分」「技術系区分」「教養区分」に分かれ、それぞれに応じて内容が異なります。
(1)行政区分
基礎能力試験(多肢選択式)
文章理解、判断推理、数的推理、資料解釈などの知能分野24題と、自然・人文・社会の時事問題など知識分野6題、計30題。時間は1時間50分。
専門試験(多肢選択式)
政治学、行政学、憲法、行政法、民法、経済学、経営学、国際関係、社会学、心理学、英語など16科目から8科目を選び40題を解答。3時間。
一般論文試験
課題に基づき短い論文を記述する試験。1時間。
人物試験
個別面接を中心に、人柄や対人能力を評価。性格検査も実施される。
(2)技術系区分(デジタル・電気電子、機械、土木、建築、物理、化学、農学、林学など)
基礎能力試験(行政区分と同様)
専門試験(多肢選択式および記述式)
各分野ごとに専門知識を問う出題。建築は設計製図を含む。
人物試験(面接)
(3)教養区分
基礎能力試験(行政区分と同様、計30題)
課題対応能力試験
置換、照合、計算、分類などを高速で処理する能力を確認。120題を15分で解答。
一般教養論文試験
文章表現力と一般的判断力を問う。1時間20分。
人物試験(面接)
いずれも第1次試験で筆記能力を測り、第2次試験で人物面を評価する総合判断により最終合格が決定されます。
6.合格後の流れと研修
最終合格者は「採用候補者名簿」に記載されます。この名簿は「教養」区分で6年間、「教養以外」で5年間有効であり、各府省がこの名簿から採用を行います。
採用を希望する者は「官庁訪問」と呼ばれる面接を各府省で受け、内定を得る必要があります。官庁訪問は自己PRや職務理解の重要な機会です。
採用後は、原則として翌年4月に各府省に配属され、研修やOJTを通じて行政職員としての基礎を身につけます。研修は府省ごとに異なりますが、公務員倫理や政策立案に必要な知識、組織行動などを学ぶ場となっています。
7.資格取得のメリット
国家公務員一般職試験に合格し採用されることには、次のようなメリットがあります。
安定した雇用と待遇
初任給は地域によって異なりますが、行政職の場合26万円前後(東京勤務の場合)。加えて各種手当やボーナスも支給され、安定性が高い。
幅広いキャリア形成
地方出先機関から本府省まで勤務先は多岐にわたり、政策実施や調査、技術分野の業務に従事できる。
社会的使命感と公共性
国民生活の向上や社会基盤整備に直接関与できることは大きなやりがいにつながる。
ワーク・ライフ・バランス
勤務時間は原則1日7時間45分、完全週休2日制。年次休暇や特別休暇に加え、育児・介護休業などの制度も充実している。
8.まとめ
国家公務員一般職試験は、政策実施を担う中核的人材を採用する試験として、多くの志望者が受験します。行政区分、技術系区分、教養区分に分かれ、それぞれに特色ある試験内容が用意されています。試験は春から夏にかけて実施され、筆記試験と人物試験を通じて総合的に人物を評価します。
最終合格後は官庁訪問を経て採用となり、安定した待遇の下で公共の利益に資する業務に従事できます。幅広いキャリアパスが用意されており、将来的な成長と社会貢献を両立できる魅力的な試験であるといえます。
10.ホームページ
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