資格の王様

67介護福祉士国家試験

1.介護福祉士国家試験とは

「介護福祉士国家試験」は、高齢者や身体上または精神上に障害があり日常生活を営むのに支障を抱える人々に対し、心身の状況に応じた介護を行い、かつその介護者への指導を担う専門職「介護福祉士」の国家資格を取得するための、筆記による国家試験です。厚生労働大臣が定めた基準を満たした上で、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが指定試験機関および登録機関として、試験の実施および資格登録の事務を担っています。

2.受験資格

介護福祉士国家試験には、複数の受験資格ルートが設けられており、主なものは以下の通りです。

(1)養成施設ルート

介護福祉士養成施設(2年以上または1年以上)を平成29年4月以降に卒業または修了した方(修了見込みを含む)

(2)実務経験+実務者研修ルート

3年以上(従業期間1,095日以上・従事日数540日以上)の介護等の業務従事に加え「実務者研修」を修了した方

(3)実務経験+基礎研修+喀痰吸引等研修ルート

同じく3年以上介護業務従事の要件を満たし、かつ介護職員基礎研修および喀痰吸引等研修(第1号または第2号)を修了した方

(4)福祉系高校ルート

平成21年度以降に福祉系高校に入学し必要科目を履修・卒業した方

(5)特例高等学校ルート

特例高校(該当入学年度)を卒業後、9ヶ月以上(従業期間273日以上・従事日数135日以上)の介護従事がある方。さらに、登録申請までに「介護過程III」の修了証明が必要(実務者研修修了者等は免除条件あり)

(6)EPAルート

EPA(経済連携協定)による外国籍の方で、3年以上の介護従事経験がある方

注記として、養成施設を令和8年度末までに卒業する方は、卒業後5年間は国家試験合格あるいは5年間の勤務継続で介護福祉士として登録可能という経過措置があります。令和9年度以降は国家試験合格が必須です。

3.試験日程(例年のスケジュール)

直近・第38回(令和7年度)試験を例にしましたが、例年の流れとほぼ同様です。

受験申し込み受付期間:令和7年8月6日(水)~9月5日(金)

インターネットまたは郵送により申込み可能

試験日:令和8年1月25日(日曜日)

午前の部:10時00分~11時45分/午後の部:13時40分~15時35分(障害等のある方には時間延長あり)

合格発表:令和8年3月16日(月曜日)にホームページ掲載、3月19日(木曜日)に結果通知発送

4.試験地

試験会場は全国35か所で実施され、受験地は申込時に選択可能です。

具体的には以下の都道府県に設定されています:

北海道、東北~関東~中部~近畿~中国~四国~九州と沖縄まで広くカバーされています。

5.受験手数料

18,380円

6.試験内容(詳細)

(1) 試験構成

試験は筆記1日のみで、午前・午後に分かれ、選択式中心に構成されており、以下のパートに分かれています

パートA(午前)

人間の尊厳と自立(人間と社会)

介護の基本(介護)

社会の理解(人間と社会)

人間関係とコミュニケーション(人間と社会)

コミュニケーション技術(介護)

生活支援技術(介護)

パートB(午後前段)

こころとからだのしくみ(こころとからだのしくみ)

発達と老化の理解(こころとからだのしくみ)

認知症の理解(こころとからだのしくみ)

障害の理解(こころとからだのしくみ)

医療的ケア(医療的ケア)

パートC(午後後段)

介護過程(介護)

総合問題(全領域/事例形式)

(2) 出題基準

出題基準は、大項目・中項目・小項目によって整理されており、作問の範囲例として位置付けられています。試験問題はこの基準をもとに構成され、横断的かつ総合的な理解が求められます。例示にない内容であっても重要な法令や施策、福祉の知見であれば出題の対象となりうるとされます。

(3) 合格基準

合格判定には以下の基準が設けられています

全パート受験者の場合:

総得点が難易度補正後で約60%以上(合格基準点)であること。

以下11科目群すべてに得点があること:

人間の尊厳と自立/介護の基本

社会の理解

人間関係とコミュニケーション/コミュニケーション技術

生活支援技術

こころとからだのしくみ

発達と老化の理解

認知症の理解

障害の理解

医療的ケア

介護過程

総合問題

(配点は1問1点、全125点満点)

一部パートのみ受験者の場合:

平均得点比率に応じたパートごとの基準を満たし、かつそのパート内の科目すべてに得点があることが必要です。パートAは60点、パートBは45点、Cは20点の配点になっています 。

パート合格は翌々年まで有効という制度もあります。

7.合格後の流れと研修

試験に合格すると、所定の登録手続きを経て「介護福祉士」として国家資格を得られます。登録はSSSCが代行し、資格取得後は介護の現場(施設・在宅・行政など)で専門相談援助業務が可能になります。

なお、合格後にSSSCによる研修が義務付けられているという記載は見当たりませんが、現場に配属された後は各事業者や自治体により研修やOJTによる実務教育が行われています。

8.資格取得のメリット

介護福祉士国家資格取得の主なメリットは以下の通りです:

国家資格としての信頼性

公的な根拠(社会福祉士及び介護福祉士法)に基づいた専門資格であるため、業界・利用者間での信頼が高い。

専門的ケアの実践力

幅広い知識(身体・認知・生活支援・コミュニケーションなど)を体系的に学び、専門ケアが可能になる。

制度的資格者としての活躍機会

施設・訪問・地域包括支援センター・行政など、多様な現場で主任やリーダーとしての役割が期待される。

キャリアパスの形成

指導・管理職、相談支援専門職、教育・研修担当など、多方面へのキャリア展開が可能。

社会福祉制度への貢献

高齢化社会の中、社会福祉の増進や質の高い介護サービス提供に貢献する専門職となる。

9.まとめ

介護福祉士国家試験は、介護福祉士として必要な知識・技能を筆記試験により評価し、合格後に国家資格が取得できる重要なステップです。受験資格は養成施設卒業、実務経験+研修、福祉系高校・EPAルートなど多様であり、自身のキャリアに応じた申込みルートを選べます。

試験は毎年1月下旬に実施され、受験申し込みは前年度の夏(8~9月)、合格発表は3月中旬です。試験内容はパートA~Cに分かれ、医療的ケアから生活支援、総合演習まで幅広く問われます。合格には総得点基準に加え、各科目群で得点が必要となる厳格な形式です。

合格後は国家資格として登録され、現場で高い専門性を発揮できる介護福祉士となり、キャリアや社会貢献の幅を広げることが可能です。

10.ホームページ

社会福祉振興・試験センター

https://www.sssc.or.jp/kaigo/