資格の王様

83不動産鑑定士試験

1.不動産鑑定士試験とは

不動産鑑定士は、不動産の経済価値(価格)を専門的に評価・判定する国家資格者であり、不動産の売買・賃貸はもとより、公共用地の取得や相続、担保評価、企業会計など、広範な分野で活躍する高度専門職です。

この資格は、公的評価の分野において唯一の国家資格とされており、不動産の鑑定評価を行うには不動産鑑定士としての登録が不可欠です。不動産の価格は市場動向や法制度、地域特性など多様な要因に左右されるため、不動産鑑定士には法務、経済、会計、建築など幅広い知識と高度な分析力が求められます。

不動産鑑定士試験は、公認会計士・弁護士と並ぶ「三大国家資格」の一つに位置づけられるほど難易度が高く、試験は一次(短答式)・二次(論文式)の二段階構成です。最終合格までには相応の学習期間と戦略的な対策が必要ですが、その分、合格後は高い専門性と社会的信用を得られる資格です。

2.受験資格

不動産鑑定士試験には、年齢・性別・学歴・実務経験等による制限は一切なく、誰でも受験することができます。高校生でも社会人でも、一定の受験料を納めれば受験が可能です。

ただし、試験の出題範囲が非常に広く、学問的レベルも高いため、一般的には大学生以上、または社会人経験者が多く受験しており、合格までには1,000〜2,000時間程度の学習時間を要するといわれています。

3.試験日程(例年のスケジュール)

不動産鑑定士試験は、年に一度実施され、一次試験(短答式)と二次試験(論文式)に分かれています。試験は国土交通省の下部機関である「不動産鑑定士試験委員会(一般財団法人不動産適正取引推進機構)」が実施します。

【例年のスケジュール】

試験種別実施時期(目安)内容
短答式試験(一次)5月中旬(第3日曜)マークシート方式(2科目)
論文式試験(二次)8月上旬(3日間)記述式・論述式問題(5科目)
合格発表(短答)6月中旬
合格発表(論文)10月下旬〜11月上旬

なお、短答式試験に合格すると、翌年・翌々年の論文式試験の受験資格が与えられます。

4.試験地

不動産鑑定士試験は、全国の主要都市に試験会場が設けられています。受験地は受験申込時に指定する形式で、以下のような都市が例年の試験会場となっています。

【主な試験会場都市】

札幌

仙台

東京

名古屋

大阪

広島

福岡

受験者数に応じて、近隣の大学・高校・試験センター等が使用されます。詳細な会場は試験実施数週間前に送付される受験票にて通知されます。

5.受験手数料

12,800円

6.試験内容(詳細)

不動産鑑定士試験は以下の2段階で構成されています。

【短答式試験(一次試験)】

試験時間:1日間(午前・午後に分かれて実施)

形式:マークシート方式(四肢択一)

科目問題数試験時間主な出題内容
経済学・経済事情25問90分ミクロ・マクロ経済学、時事経済、経済統計
会計学25問90分財務会計、管理会計、簿記理論など

合格基準は、各科目40%以上かつ2科目合計で70%以上の正解率(50問中35問前後)が目安とされます。

【論文式試験(二次試験)】

試験日数:3日間連続で実施(例年金・土・日)

形式:記述・論述式(手書きによる解答)

試験日科目試験時間出題範囲・内容
第1日民法2時間物権・債権など私法上の基本概念、判例応用
経済学2時間計量・理論問題、図表を伴う分析など
第2日会計学2時間財務諸表分析、会計原則、管理会計など
鑑定理論(演習)2時間鑑定評価手法の適用、事例分析
第3日鑑定理論(論文)3時間鑑定評価制度全般、理論的背景と制度運用

【鑑定理論】についての補足

不動産鑑定士試験の最大の山場であり、配点比重も高い科目です。「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」といった基本的評価手法の理解に加え、適用上の判断(権利関係、地域特性、時点修正等)が問われます。

7.合格後の流れと研修

不動産鑑定士試験に合格した後は、以下の流れで資格の登録と実務への準備が進みます。

【実務修習(登録前研修)】

合格者は、国土交通省が指定する「不動産鑑定士協会連合会」の主催する実務修習(概ね1年間)を修了する必要があります。

内容:講義(座学)・演習・実地評価・レポート提出など

目的:鑑定評価書の作成能力・倫理観の習得

費用:数十万円(自己負担)

【登録・業務開始】

修習修了後に国土交通大臣に登録申請を行い、「不動産鑑定士」として正式に業務が可能となります。登録には実務修習修了証・必要書類の提出・登録料が必要です。

8.資格取得のメリット

不動産鑑定士資格を取得することで、以下のような多くのメリットがあります。

① 高度専門職としての地位

法律・経済・会計に精通し、国家的制度にも関与する専門性

公共用地取得、裁判所・税務署からの依頼評価など社会的信頼が高い

② 高収入・独立可能な資格

一部大手鑑定法人では年収1,000万円以上も可能

経験を積んで独立開業すれば、法人設立や資産評価業務の展開も

③ 他資格との相乗効果

弁護士・公認会計士・税理士との業務提携で評価業務が広がる

不動産系の他資格(宅建、マン管、建築士など)との併用で活躍領域が拡大

④ 官公庁・金融機関・大手不動産会社への就職に有利

国土交通省、都道府県庁、都市再生機構(UR)等へのキャリアパスも

銀行・保険・不動産開発会社などで評価部門の専門職として活躍

9.まとめ

不動産鑑定士試験は、法律・経済・会計の総合力を問われる非常に高度な国家試験であり、合格までには長期的な学習と計画が不可欠です。しかしその分、取得後のキャリアや社会的地位、収入面でのリターンは大きく、不動産評価のプロフェッショナルとして日本全国で高く評価される資格です。

また、今後の社会においても、地価変動・空き家問題・都市再開発・相続など、不動産の経済的価値を適正に評価するニーズはますます高まると見込まれており、不動産鑑定士の社会的意義は今後も広がり続けるでしょう。

長期的な視野で専門職を目指す方には、非常に魅力ある資格です。

10.ホームページ

国土交通省

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/kanteishi/shiken.html