84管理業務主任者試験
1.管理業務主任者試験とは
管理業務主任者は、分譲マンションなどの「管理組合」と「管理会社」との間に立ち、契約内容や重要事項を適正に説明・確認し、円滑な管理運営をサポートするための国家資格者です。
この資格は、マンション管理適正化法(正式名称:マンションの管理の適正化の推進に関する法律)に基づいて設けられており、マンション管理会社(管理業者)は一定数の管理業務主任者を事務所ごとに設置する義務があります。
管理業務主任者は、主に以下の3つの業務に従事します。
管理委託契約を締結する前の重要事項の説明
管理事務に関する報告書の作成と交付
上記の実施についての管理組合への説明・助言
マンションは集合住宅であるがゆえに、所有者同士の合意形成や管理業務の適正実施が欠かせません。管理業務主任者は、その適正な運営を法的・実務的に支える専門家であり、近年のマンションの高経年化・大規模化に伴って、ますます重要性が高まっています。
2.受験資格
管理業務主任者試験には、受験資格の制限はありません。年齢・性別・学歴・実務経験などにかかわらず、誰でも受験できます。
これは、他の不動産系資格(宅建士やマンション管理士など)と同様であり、社会人や学生、主婦、定年退職後の学習者まで、幅広い層に開かれた国家試験となっています。
ただし、試験合格後に「登録」して管理業務主任者として業務を開始するには、「実務講習」の修了または「2年以上の実務経験」が必要です。
3.試験日程(例年のスケジュール)
管理業務主任者試験は、年に1回、12月の第1日曜日に全国一斉で実施されます。試験の実施・運営は、公益財団法人マンション管理センターが行います。
【例年のスケジュール】
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 7月下旬〜9月中旬 | 受験申込(インターネット・郵送) |
| 11月中旬 | 受験票発送 |
| 12月第1日曜 | 試験日(13:00〜15:00) |
| 翌年1月中旬 | 正答発表(公式サイト上) |
| 1月下旬〜2月上旬 | 合格発表(合格通知の郵送) |
年度によって若干前後することもありますが、12月上旬の実施はほぼ固定されています。
4.試験地
管理業務主任者試験は、全国の主要都市で実施されます。受験申込時に居住地域などに応じて試験地を選択し、受験票によって会場が指定されます。
【主な試験地】
北海道(札幌)
宮城県(仙台)
東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県
愛知県(名古屋)
大阪府・京都府・兵庫県
広島県・福岡県など
全国20か所以上に会場が設けられており、地方在住者でも比較的受験しやすい環境です。試験会場は大学・専門学校・公共施設などが使用され、受験票にて詳細が通知されます。
5.受験手数料
8,900円
6.試験内容(詳細)
試験は、四肢択一のマークシート式(50問)で構成され、試験時間は120分です。全問1問2点、100点満点で評価されます。
【出題分野と目安配点】
| 分野 | 出題数(目安) | 主な内容 |
|---|---|---|
| マンション管理適正化法関連 | 約8問 | 重要事項説明義務、登録制度、主任者制度、罰則規定等 |
| 区分所有法・民法・関連法規 | 約14問 | 区分所有者の権利義務、共用部分の管理、民法の基本原理等 |
| 管理実務(管理規約・設備等) | 約20問 | 管理組合運営、管理規約、長期修繕計画、設備の維持管理等 |
| 会計・建築・その他 | 約8問 | 管理組合会計、建築構造、原価償却、資金計画等 |
【合格基準】
例年の合格ラインはおおむね70点前後(100点満点中)
合格率は約20〜25%(毎年変動)
※令和5年度(2023年)の合格点は70点、合格率は22.2%でした。
【出題傾向の特徴】
法令科目は条文中心の出題:記憶型対策が有効
管理実務は事例問題が多い:実務知識と応用力が問われる
民法は宅建試験との共通点が多い:宅建合格者には有利
マンション管理士試験と共通項が多い:ダブル受験者も多い
特に管理実務分野は実際のマンション管理を想定した設問が出題され、管理組合との関係性、設備知識、会計処理の理解など多面的な知識が求められます。
7.合格後の流れと研修
試験に合格した後、「管理業務主任者」として業務に就くには、以下の手続を経る必要があります。
【1】登録申請
合格者は、公益財団法人マンション管理センターを通じて、国土交通大臣の管理業務主任者登録を受けます。
登録料:17,000円
登録期間:なし(更新不要)
※登録には、次のいずれかの要件が必要です:
実務経験2年以上
国土交通省指定の「実務講習」修了(通常は通信+1日スクーリング)
実務経験がない場合は、実務講習(約15,000円程度)を受講することで登録が可能となります。
【2】業務従事
登録完了後は、「管理業務主任者証」が交付され、正式に主任者としてマンション管理業務に従事することができます。
8.資格取得のメリット
管理業務主任者資格の取得には、以下のようなメリットがあります。
【① マンション管理会社への就職・転職に有利】
法律上、管理会社には事務所ごとに5分の1以上の管理業務主任者の設置義務があり、有資格者のニーズは常に存在しています。特に都市部や大手不動産グループの管理会社では、採用条件や昇進要件に含まれることもあります。
【② 宅建士・マン管との相乗効果】
宅地建物取引士やマンション管理士と試験科目が共通しているため、効率的に複数資格を取得でき、キャリアアップや独立への道が広がります。
【③ 実務に直結した実践的知識の習得】
合格のための学習は、管理組合との契約手続、会計処理、建物設備の知識など、実際の業務に直結しており、現場で即戦力として活用できます。
【④ 働きながらでも合格が目指せる】
試験内容はやや専門的ですが、独学や通信講座での合格者も多数います。出題傾向が安定しているため、計画的な学習で合格に到達しやすい資格です。
9.まとめ
管理業務主任者試験は、マンション管理の現場を法律・実務両面から支える専門職への登竜門です。国家資格としての信頼性が高く、マンション管理会社における法的必置資格という地位から、安定したニーズと実務的価値を有しています。
近年、マンションの老朽化や管理組合の高齢化・人材不足といった社会課題に対応するうえで、管理業務主任者の果たす役割はますます大きくなってきています。
不動産・建築・法律に関心があり、専門性を身につけたいと考える方にとって、管理業務主任者資格は非常に魅力的で、実務でも活用しやすい国家資格といえるでしょう。
10.ホームページ
一般社団法人マンション管理業協会

