85マンション管理士試験
1.マンション管理士試験とは
マンション管理士試験は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(通称:マンション管理適正化法)に基づいて実施される国家資格試験です。合格者は「マンション管理士」として、主にマンションの管理組合に対して、法律・会計・建築・運営に関する専門的な助言や指導を行うことができます。
この資格の役割は、区分所有者(マンションの住民たち)が主体となって運営する「管理組合」を支援し、マンションの適正な管理・運営や長期的な維持保全を実現することにあります。特に、高経年化したマンションや、区分所有者の高齢化、空室増加、相続・賃貸化の進行といった社会問題が顕在化するなかで、マンション管理士の専門性が注目されています。
宅地建物取引士、管理業務主任者と並ぶ「不動産管理の三資格」の一角を占める国家資格であり、毎年1万人前後の受験者が挑戦する注目資格の一つです。
2.受験資格
マンション管理士試験には、年齢・性別・学歴・国籍・実務経験等の制限は一切ありません。
誰でも受験することができ、これが社会人のキャリアアップや定年後の再就職を目指す方にとっても門戸の広い資格となっている理由の一つです。
ただし、試験内容は高度な法令・建築・会計の知識を要するため、十分な学習時間を確保する必要があります。なお、合格後の登録に際しても、特別な実務経験は求められません。
3.試験日程(例年のスケジュール)
マンション管理士試験は、年1回、11月の最終日曜日(またはその近辺の日曜日)に全国一斉に実施されます。試験の実施・運営は、公益財団法人マンション管理センターが行っています。
【例年のスケジュール】
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 7月下旬〜9月上旬 | 願書受付(インターネット・郵送) |
| 11月最終日曜日 | 試験日(13:00〜15:00) |
| 翌年1月中旬 | 正答発表(公式HP) |
| 1月下旬〜2月上旬 | 合格発表・通知発送 |
受験申込は例年7月末に開始され、9月上旬に締め切られます。受験票は11月中旬に送付され、受験者は指定された会場で受験します。
4.試験地
マンション管理士試験は全国47都道府県の主要都市で実施されます。以下に代表的な試験地を示します。
【主な試験地】
北海道(札幌)
東北(仙台、盛岡)
関東(東京、横浜、埼玉、千葉、宇都宮、前橋)
中部(名古屋、新潟、静岡、金沢)
関西(大阪、京都、神戸)
中国(広島、岡山)
四国(高松、松山)
九州(福岡、熊本、鹿児島、那覇)
会場の詳細は、試験日約10日前に発送される受験票に記載されます。
5.受験手数料
9,400円
6.試験内容(詳細)
試験は、四肢択一式のマークシート方式(全50問)で構成され、試験時間は120分(13:00〜15:00)です。全問2点、100点満点で採点されます。
【出題分野と配点比率(目安)】
| 分野 | 出題数 | 内容の概要 |
|---|---|---|
| 区分所有法・民法 | 約15問 | 区分所有法、民法、判例、共有・専有部分の権利義務等 |
| マンション管理適正化法 | 約10問 | 登録制度、管理業務主任者制度、罰則など |
| マンション標準管理規約・運営実務 | 約15問 | 管理組合、理事会、総会、長期修繕計画、修繕積立金等 |
| 建築・設備・維持保全 | 約5問 | 建築基準法、設備機器、耐震改修、維持管理の知識 |
| 会計・税務 | 約5問 | 管理組合会計、税金、簿記の基本 |
【合格基準】
合格ラインは年度ごとに変動(目安:35〜38問程度の正解)
合格率は7〜9%前後とかなり低い
相対評価(全体の上位10%前後を合格させる方式)とされる
【出題傾向と学習のポイント】
法令問題は条文知識と判例理解が必要:とくに区分所有法と民法は試験の核
事例問題が多く、応用力が問われる:条文の暗記だけでは対応できない
標準管理規約の正確な読み込みが必須:細かい文言の正誤で差がつく
建築・会計分野は出題がやや難化傾向:専門知識の基礎固めが重要
7.合格後の流れと研修
マンション管理士試験に合格しただけでは、すぐに業務を開始できるわけではありません。以下の手続を経て、正式に「マンション管理士」として活動が可能になります。
【登録手続】
登録先:国土交通大臣(申請はマンション管理センター経由)
登録料:9,000円
登録要件:特に実務経験などは不要
登録が完了すると、「マンション管理士登録証」が交付され、マンション管理士としての業務を開始できます。
【業務開始にあたって】
マンション管理士は業務独占資格ではなく、名称独占資格です。そのため、登録をしなくても「相談業務」などを行うことは可能ですが、「マンション管理士」と名乗るには登録が必要です。
実務に就く場合、以下のような方法があります。
管理会社の相談員・指導員として勤務
建築士・宅建士・司法書士などの兼業資格者がマンション管理業務を補完
フリーランス・独立開業(コンサルタント業務、セミナー講師など)
※任意団体である「日本マンション管理士会連合会」などに加入することで、研修機会や実務経験の獲得にもつながります。
8.資格取得のメリット
マンション管理士は、以下のような面で高い評価と将来性のある資格です。
【① 管理組合からの相談ニーズが拡大】
高齢化したマンション、住民間のトラブル、空き家・空室問題、管理会社との関係性など、管理組合が自立的に運営するための外部専門家としての需要が増加しています。
【② 多資格との相乗効果が大きい】
宅建士・管理業務主任者・司法書士・建築士などと組み合わせることで、不動産・法務・建築を横断する総合的なコンサルタントとしての業務展開が可能になります。
【③ 副業・定年後のキャリアに有利】
マンション管理士の業務は、スポット型の相談や顧問契約が中心であり、副業や定年後の再就職・独立にも向いています。
【④ 社会的意義の高い活動が可能】
管理不全や老朽化が進むマンションを、法的・運営的に支援することは、住民の生活の安心・安全に直結する、やりがいのある専門職です。
9.まとめ
マンション管理士は、マンションという「一つの社会」の健全な運営を支えるための、法律・建築・運営知識を兼ね備えた専門家です。試験の難易度は高く、合格率も低いため、計画的な学習が不可欠ですが、それだけに取得後の信頼性と活用範囲は大きい資格です。
これからの日本社会において、高齢化・老朽化・空き家対策が大きな課題となる中で、マンション管理士の存在はますます必要とされることは間違いありません。マンションに住む誰もが当事者であるこの時代に、安心・安全な住環境を支える知識とスキルを得ることは、自身の財産形成にもつながる意義ある選択といえるでしょう。
10.ホームページ
公益財団法人マンション管理センター

