資格の王様

86土地家屋調査士試験

1.土地家屋調査士試験とは

土地家屋調査士とは、土地や建物の所在や形状、面積などを正確に調査・測量し、不動産登記簿に記載する「表示に関する登記」の申請を代理できる国家資格者です。具体的には、土地の分筆や合筆、地目変更、建物の新築や取り壊しに伴う登記を行うために必要な図面や申請書類を作成し、登記所(法務局)へ提出します。

また、土地の境界に関する問題についても、所有者同士の立ち会いや合意のもとで測量・図面作成を行うことで、トラブルの未然防止に貢献しています。土地家屋調査士は、測量技術と法律知識の両方を活かし、不動産に関する物理的状況と法的記録を結びつける専門職です。

士業のひとつとして独立開業も可能であり、不動産関連分野での高度な専門性と社会的信用を持つ資格といえます。

2.受験資格

土地家屋調査士試験には、年齢、学歴、国籍、性別、実務経験などに関する制限は一切ありません。どなたでも受験することが可能です。たとえば高校生や社会人、定年後の方など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が受験しています。

ただし、試験内容は測量、民法、不動産登記法、作図など幅広く、学習時間は1,500〜2,000時間程度が必要とされています。合格を目指すには、計画的な学習と継続した努力が重要です。

3.試験日程(例年のスケジュール)

土地家屋調査士試験は、年に1回、法務省の監督のもとで実施されます。試験は「筆記試験」と「口述試験」の2段階に分かれています。

筆記試験は毎年10月中旬ごろ(第3日曜日)に全国で一斉に行われます。筆記試験に合格した方のみ、翌年1月中旬ごろに実施される口述試験を受験することができます。

試験日程の主な流れは以下のとおりです。

7月上旬~中旬:受験申込期間

10月中旬:筆記試験

12月下旬:筆記試験合格発表

1月中旬:口述試験

2月上旬:最終合格発表(口述試験を含む)

詳細な日程は、法務省のホームページや受験案内にて確認することができます。

4.試験地

試験は、全国7つの主要都市で実施されます。受験申込時に希望する試験地を選択し、受験票に記載された会場で受験します。筆記試験と口述試験は、原則として同じ試験地で行われます。

試験地は以下のとおりです。

札幌

仙台

東京

名古屋

大阪

広島

福岡

各都市では大学や専門学校などの公共施設が会場として利用されます。口述試験の際には、面接形式で試験官と1対1で受け答えを行うことになります。

5.受験手数料

8,300円

6.試験内容(詳細)

土地家屋調査士試験は、筆記試験と口述試験に分かれており、特に筆記試験では法律・実務・測量・作図など多岐にわたる知識と技能が問われます。

筆記試験

筆記試験は、択一式問題と記述式問題(午前・午後)の合計3科目で構成されています。

● 択一式試験

問題数:20問

試験時間:90分

配点:1問5点の計100点

主な出題分野:不動産登記法(表示登記)、民法(物権・相隣関係など)、測量法、登記実務

正答率70%程度が合格の目安とされていますが、年度により変動します。

● 記述式試験

午前の部:登記申請書の作成

午後の部:地積測量図・建物図面の作成(作図)

各科目90分、各50点の計100点

午前は記述式の文章問題、午後は製図用具を使って実際に図面を描く作業が求められます。作図は、測定値から図面を正確に作成し、見やすさ・計算の正確性・記載の適切さが評価対象となります。

口述試験

筆記試験合格者のみが受験可能な面接形式の試験です。

時間:約5〜10分

内容:不動産登記法に関する基礎知識や実務における判断についての口頭試問

口述試験は、筆記試験の確認的な意味合いが強く、基本的な質問に的確に答えることができれば合格できます。ただし、まったく準備せずに臨むと不合格となる場合もあるため、注意が必要です。

7.合格後の流れと研修

試験に合格した方は、土地家屋調査士として業務を開始するために、土地家屋調査士会を通じて法務大臣に対して登録申請を行います。

登録後には、土地家屋調査士証票が交付され、正式に土地家屋調査士として活動を開始することができます。

さらに、新たに登録した方は、全国の土地家屋調査士会連合会が主催する「新人研修」の受講が義務付けられています。この研修では、実務の流れ、職業倫理、登記手続の具体例、境界確定に関する実務的な知識などが体系的に学べます。

また、土地家屋調査士として業務を行うには、所属する都道府県の土地家屋調査士会への入会が必要となります。調査士会を通じて継続的な研修や実務支援を受けることができる体制が整っています。

8.資格取得のメリット

土地家屋調査士の資格を取得することによって、次のような多くのメリットが得られます。

まず、不動産の表示登記に関する申請代理業務は、土地家屋調査士の独占業務とされており、測量業務を含めた専門的な分野で安定した需要があります。

次に、個人で独立開業が可能であり、実務経験を積んだうえで自分の事務所を設立し、フリーランスとして働くこともできます。努力次第で高収入も可能であり、自らの裁量で仕事を進める自由度も高い職業です。

また、他士業との相性が良いのも特徴です。たとえば、司法書士や行政書士、不動産鑑定士などと連携することで、業務の幅を広げることができ、不動産登記や境界確認においてワンストップのサービスを提供することが可能になります。

さらに、相続、空き家問題、境界トラブルなど、社会的課題が深刻化する中で、土地家屋調査士の果たす役割はますます重要になっています。今後のニーズの増加が見込まれる点でも、将来性のある資格といえるでしょう。

9.まとめ

土地家屋調査士は、不動産の物理的情報を調査・測量し、それを登記という法的記録に変換するプロフェッショナルです。登記手続の専門家として、土地や建物の正確な情報を提供し、所有者の権利を守ることに大きく貢献しています。

試験は難易度が高く、法律・測量・作図など多岐にわたる知識と技能が求められますが、その分取得後の信頼性や専門性は非常に高いものです。独立開業が可能であり、キャリアの選択肢も広いため、長期的な視野で専門職を目指す方にとっては非常に魅力的な国家資格です。

土地や不動産に関わる分野で専門性を発揮したいと考えている方にとって、土地家屋調査士は確かな価値を持つ資格といえるでしょう。

10.ホームページ

法務省

https://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html