87測量士・測量士補試験
1.測量士・測量士補試験とは
測量士および測量士補は、国土交通省所管の国家資格であり、測量法に基づいて業務を行うために必要とされる技術資格です。
測量とは、土地の位置や高さ、面積、形状などを正確に測る作業を指し、地図作成、建設工事、都市計画、災害対策、不動産登記など、社会基盤を支えるさまざまな分野で欠かせない作業です。
このうち、「測量士」は測量計画を立案し、指導・監督する立場にあります。一方、「測量士補」は測量士の指示のもとで測量作業を補助的に行う技術者です。どちらも専門性の高い職種であり、公共測量などの法的要件に基づく業務では、これらの有資格者の関与が求められています。
なお、資格取得には、文部科学省認定の大学や専門学校での所定課程の修了、または国家試験への合格が必要となります。本稿では、主に国家試験による取得ルートを中心にご紹介いたします。
2.受験資格
測量士試験および測量士補試験は、いずれも受験資格に制限はありません。年齢、学歴、実務経験、国籍などを問わず、誰でも受験することができます。
ただし、測量士補の資格を取得するには、測量士補試験に合格するか、もしくは国土交通大臣の登録を受けた指定校において所定のカリキュラムを修了する必要があります。
一方、測量士については、測量士補として一定年数以上の実務経験を積んだうえで申請するルートも存在しますが、ここでは国家試験による取得を主に取り上げます。
このように、誰でも受験できる一方で、試験の内容は高度であり、十分な事前学習が不可欠です。
3.試験日程(例年のスケジュール)
測量士試験および測量士補試験は、年に1回、国土交通省が主催し、一般財団法人国土地理協会が試験事務を行っています。例年、以下のようなスケジュールで実施されます。
試験公告:毎年1月下旬〜2月初旬
受験申請期間:2月初旬〜3月上旬
試験日:5月中旬(通常は日曜日)
合格発表:9月上旬
受験申込は原則として郵送で行い、受験票は試験の2〜3週間前に送付されます。試験当日は全国各地の指定会場にて一斉に筆記試験が実施されます。
合格発表は国土地理協会のウェブサイトおよび郵送で通知されます。なお、測量士試験・測量士補試験の両方を併願することは可能です。
4.試験地
試験会場は全国の主要都市に設けられます。年度によって若干の変動がありますが、例年以下の都市が会場として使用されています。
札幌
仙台
東京(複数会場あり)
新潟
名古屋
大阪
広島
高松
福岡
那覇
受験者の希望により試験地を選択することができますが、希望者が集中する地域では会場が分散されることもあります。
また、受験票に記載された指定会場での受験が義務付けられており、当日の変更や遅刻には対応できないため注意が必要です。
5.試験手数料
測量士試験 4,250円
測量士補試験 2,850円
6.試験内容(詳細)
測量士試験および測量士補試験は、ともに筆記試験で構成されていますが、その内容・難易度には大きな差があります。
測量士試験の内容
測量士試験は、記述式の筆記試験です。試験時間は4時間30分で、主に以下のような内容が出題されます。
【出題範囲】
測量に関する法規
測量機器とその使用法
基準点測量、水準測量、地形測量
写真測量(空中写真測量含む)
GIS(地理情報システム)
地図の編集・調整
測量計画・工程管理
測量誤差とその調整法
応用測量(用地測量、深浅測量など)
【試験形式】
記述式(論述・計算・図示等を含む)
出題数:おおむね8問前後
合格基準:総合評価による(明確な得点基準は非公開)
論述問題や図解、計算問題がバランスよく出題され、測量全般にわたる体系的な理解と実務的応用力が求められます。過去問を繰り返し解くことに加え、法改正や最新の測量機器に関する理解も必要です。
測量士補試験の内容
測量士補試験は、マークシート方式の選択式試験です。出題数は28問、試験時間は3時間です。
【出題範囲】
測量法および測量関係法令
測量機器の基礎知識
各種測量の概要(基準点、地形、水準、写真測量等)
誤差と精度、計算問題
測量成果品に関する知識
GIS、地図情報の基礎
【試験形式】
四肢択一式(マークシート)
全28問
合格基準:60%前後(年度により変動)
測量士補試験では、基本用語や計算式の正確な理解が問われるほか、誤差処理や図面の読み取りに関する出題も見られます。暗記だけでなく、測量技術の本質を理解しておく必要があります。
7.合格後の流れと研修
合格後、登録申請を行うことで「測量士」または「測量士補」として正式に活動することができます。登録は、国土地理院に対して行い、登録完了後に「登録証」が交付されます。
【登録手続きの概要】
必要書類:合格証明書、申請書、住民票など
登録料:測量士 約17,000円/測量士補 約15,000円(年度による)
登録完了までの期間:申請から1〜2か月程度
また、測量士として業務を開始するためには、測量業者への所属、または測量業者としての登録が必要です。公共測量を請け負うには、国土地理院への「測量業者登録」も義務付けられています。
新規登録後に義務づけられた研修制度はありませんが、各都道府県測量協会や民間の測量会社などで実務研修を受けることが推奨されています。
8.資格取得のメリット
測量士・測量士補の資格を取得することで、以下のような多くのメリットが得られます。
第一に、公共測量業務において資格者として計画立案・業務遂行に直接関与できることです。とくに測量士は、法律上の「責任者」としての立場を担うことができ、業界での信頼性が非常に高まります。
第二に、建設業界、地図製作業界、不動産関連業界など、幅広い分野で活躍できる点が挙げられます。都市計画、土地開発、インフラ整備、災害復興など、測量が関係する分野は極めて広範です。
第三に、近年のドローン測量や3Dレーザー計測、地理空間情報システム(GIS)などの技術進化により、測量の専門知識を持つ技術者の需要は増加傾向にあります。特に自治体や建設コンサルタントでは、有資格者の採用を積極的に進めている傾向があります。
第四に、独立開業も視野に入れることができる点です。測量事務所を開設し、自治体や民間企業から業務を受託することも可能です。実務経験と人脈を活かせば、安定した収入が見込まれます。
9.まとめ
測量士・測量士補は、国土や地理空間に関する専門的知識を活かして、社会のインフラ整備や防災、都市開発、不動産取引などに深く関与する国家資格です。とくに測量士は、測量計画の立案から指導・監督までを行う責任ある立場であり、公共事業において欠かせない存在です。
試験は難易度が高く、測量技術・法令・計算力・応用力など総合的な理解が求められますが、地道な学習と過去問対策を継続すれば、十分に合格可能です。
測量技術は目立ちにくい分野ではありますが、正確な測量なしに都市も道路も建物も成り立ちません。社会を根底から支える誇りある職業として、測量士・測量士補は今後も高い需要と意義を持ち続けるでしょう。
10.ホームページ
国土地理院

