88一級建築士試験
1.一級建築士試験とは
一級建築士試験は、建築物の設計および工事監理を行うために必要な国家資格「一級建築士」の取得を目的とした試験です。建築士法により定められた業務独占資格であり、この資格を得なければ、大規模な建築物(学校・病院など)や高さ・規模が制限を超える建築物について設計・監理することができません。
試験は「学科試験」と「設計製図試験」の二段階で構成されており、それぞれに合格する必要があります。国家資格であり、合格後に国土交通大臣の免許登録を受けることで、一級建築士として正式に活動できるようになります。
2.受験資格
一級建築士試験の受験には、法定の受験資格が定められていますが、2022年の法改正により学歴による受験ルートが充実しました
主な受験要件
四年制大学で建築学科等指定科目を修了した者
二級建築士または建築設備士の資格保有者
実務経験(7年以上)を有する者で、二級建築士を取得した者
以前は実務経験が必須でしたが、今は大学等で必要単位を取得すれば実務経験を積まずに受験可能になっています
3.試験日程(例年のスケジュール)
一級建築士試験は毎年1回行われ、近年の令和7年度(2025年)は以下のようになっています
受験申し込み期間:4月1日~4月14日(郵送提出は4月18日まで)
学科試験:7月27日(日)
学科試験 合格発表:9月3日(水)
製図課題発表:7月25日(金)
設計製図試験:10月12日(日)
設計製図 試験結果発表:12月24日(水)
受験料は17,000円(非課税)で、受験票はオンラインマイページからダウンロードします。
4.試験地
試験は、全国の47都道府県で実施されます。学科試験と製図試験ともに、都道府県ごとに複数会場が設けられており、受験申し込み時に希望地域を選択します。受験票により会場が通知され、当日は指定された会場で受験します。
5.受験手数料
17,000円
6.試験内容(詳細)
一級建築士試験は、学科試験と設計製図試験の2部構成です。
6-1 学科試験
学科試験は、四肢択一式のマークシート形式で、以下の5科目・合計125問(125点満点)を6時間30分で解答します
| 科目 | 問題数 | 内容概要 |
|---|---|---|
| 計画(建築計画) | 20問 | 建築の配置や空間構成、都市計画、歴史 |
| 環境・設備 | 20問 | 空調・換気・照明・音環境など |
| 法規 | 30問 | 建築基準法・建築士法・消防法など |
| 構造 | 30問 | 構造力学、各種構造形式、材料特性 |
| 施工 | 25問 | 工事の工程管理、品質管理、安全衛生 |
合格基準
各科目の都度合格ライン(過半点)および総合点で概ね90点台以上が基準です
合格率は約20~25%で、科目間のバランスが重要です
6-2 設計製図試験
学科試験合格者のみが受験できる「設計製図試験」は、課題が公表された年の7月下旬に公開され、10月の本試験で図面・要点説明を作成します。時間は6時間30分(または6時間)、主な評価項目は以下の通りです
空間構成
建築計画
構造計画
設備計画
これは単なる図面作成ではなく、与えられた条件の中で実現可能かつ論理的な計画を示す能力が問われます。合格率は約30%前後ですが、総合合格率(学科+製図)は10%前後とされます。
7.合格後の流れと研修
一級建築士試験合格後は、以下の手続きと活動が必要です。
7-1 登録申請
申請先:国土交通大臣
必要書類:合格証、住民票、登録申請書など
登録料:所定金額(年度により変動)
登録が完了すると「一級建築士免許証」が交付され、法律上「建築士」として正式に業務に従事できます。
7-2 実務経験
法的には登録後すぐに働けますが、実際には設計事務所や建設会社で実務経験とOJT研修を積むことで技術と判断力を養います。多くの事務所では新人研修制度を整備しており、経験を通じて技術者として成長します。
8.資格取得のメリット
一級建築士を取得することで、以下のメリットを享受できます:
業務独占権:大規模建築物の設計・監理が可能になります
キャリア展開の幅広さ:設計事務所、ゼネコン、住宅・設備メーカーなど様々な業界で活躍できます
独立開業の道:自ら設計事務所を設立し、独立することも可能です。
高い社会的信用:国家資格であり、社会的評価が高く、報酬や待遇面でも優位になります。
他資格との相乗効果:構造設計者や設備専門家、監理技術者など、他の専門分野とも連携しやすくなります。
9.まとめ
一級建築士試験は、建築士法に基づく国家資格を取得するための重要な試験で、学科試験で幅広い知識を問われ、設計製図試験で実務に即した設計力と表現力が試されます。合格率は低めですが、学科試験の合格後には製図試験の免除制度があるなど、戦略的に取り組むことで合格可能です。
取得後は、法的に設計・監理業務を担う権限を持つプロフェッショナルとして、社会的信用・独立開業の自由・キャリアの多様性というメリットを得ることができます。建築に対する深い理解と責任ある姿勢が求められる、極めてやりがいのある資格です。
10.ホームページ
建築技術教育普及センター

