99運行管理者試験
1.運行管理者試験とは
運行管理者試験とは、貨物または旅客の自動車運送事業において、安全で適正な運行管理を担うための国家資格「運行管理者資格証」の取得を目的とした試験です。この資格は、トラックやバス、タクシーなど公共性の高い事業用自動車を運営する事業者にとって、必須の体制の一環として位置付けられ、法律に基づき指定された機関によって実施されています。運転者の疲労状態の把握や点呼の実施、運行ルートや休憩施設の整備、安全運行の指示など、安全輸送を支える責任重大な役割を担います。
2.受験資格
運行管理者試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。第一に、運行管理に関する実務経験を1年以上有する者であることが求められます。具体的には、貨物軽自動車運送事業を除く事業用自動車、または特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車を対象とした、運行管理に関する実務経験が1年以上必要です。第二に、国土交通大臣が認めた講習機関で行われる「基礎講習(貨物または旅客)」を修了、または試験日の2週間前までに修了予定であることも受験資格として認められています。この基礎講習は法令や実務、健康管理、車両管理などを網羅し、試験に必要な知識を体系的に習得するためのものです。
3.試験日程(例年のスケジュール)
運行管理者試験は、毎年二回、3月と8月に実施されています。令和7年度第一回については、具体的に8月2日から8月31日の期間で実施され、受験者が複数の日程や会場から都合に合わせて予約する方式が採られています。試験時間は90分で、社会人でも受験しやすい柔軟な日程設定となっています。
4.試験地
試験は全国47都道府県で受験が可能です。受験申込後に、CBT試験専用サイトで希望する日時と会場を選択し、予約を行うことになります。ただし、会場によっては定員が早期に埋まることもあるため、早めの手続きが推奨されます。この全国展開により、受験者は居住地や勤務先に近い会場を選びやすく、受験の機会が広く保障されています。
5.受験手数料
6,000円
6.試験内容(詳細)
運行管理者試験は、貨物試験と旅客試験に区分され、どちらか一方のみを受験することができます。いずれの場合も試験時間は90分で、全30問の五肢択一式問題が出題されます。出題分野は大きく5つに分かれており、それぞれの分野ごとに重点的に学習すべき内容があります。
第1の分野は「貨物自動車運送事業法関係」または「道路運送法関係」です。貨物試験では貨物自動車運送事業法に基づく営業許可の要件、事業計画の変更、運送約款の内容、下請けや再委託に関する規定、運賃・料金の届出などが問われます。旅客試験では道路運送法に基づく旅客運送の許可制度、乗合バス・貸切バス・タクシーそれぞれの運行条件、運賃・料金の上限規制、運送約款に関する規定などが中心です。いずれの場合も、法令そのものの条文知識だけでなく、運送事業の実務に即した問題が出題される傾向にあります。例えば「事業用自動車を増車する場合に必要となる手続き」や「運賃の改定を行う際の許可・届出の区別」などが典型的な出題例です。
第2の分野は「道路運送車両法関係」で、出題数は4問程度です。この分野では、自動車の保安基準、定期点検整備の実施義務、車検制度、整備管理者の選任義務など、車両の安全性確保に関する知識が問われます。例えば「事業用自動車の法定点検周期」や「整備管理者を選任しなければならない事業所規模」などが出題され、車両管理の責任体制を理解しているかどうかが試されます。
第3の分野は「道路交通法関係」で、出題数は5問程度です。ここでは、過労運転や酒気帯び運転の禁止、速度制限、積載制限、交差点や踏切での運転ルールなど、交通規則全般が対象になります。特に運行管理者は運転者に対して指導・監督する立場にあるため、違反行為の類型や点数制度なども理解しておく必要があります。例えば「過労運転を防止するために運行管理者が果たすべき点呼の内容」や「大型貨物自動車の積載重量制限」に関する問題が出題されることがあります。
第4の分野は「労働基準法関係」で、出題数は6問程度と比較的多めです。ここでは、労働時間・休憩・休日の規定、時間外労働の上限、深夜労働に関する規制、年少者・女性に関する労働条件、さらには労働安全衛生法の一部内容も取り上げられます。とりわけ運送事業では長時間労働や過重労働が事故の要因となるため、拘束時間・運転時間・休息期間など、国土交通省の告示に基づく労働時間規制も重要な出題範囲です。実際に「1日の運転時間の上限」「連続運転可能時間」「休息期間の最低基準」などが具体的に問われることがあります。
第5の分野は「運行管理業務に必要な実務上の知識・能力」で、7問程度出題されます。ここは最も実務色が濃い領域であり、点呼の実施方法、アルコールチェックの義務、乗務前・乗務後の健康状態確認、異常気象や災害時の対応、適切な休憩や仮眠の取り方などが中心です。さらに、輸送の安全確保のための教育訓練の内容、事故発生時の初動対応、事故記録の保存方法といった、現場で即応できる知識も問われます。例えば「点呼時に必ず確認すべき事項はどれか」「アルコール検知器を用いた確認の記録保存期間は何年か」といった実務に直結した問題が出題されるのが特徴です。
全体として30問という問題数は決して多くありませんが、幅広い分野からバランスよく出題されるため、不得意科目を作らない学習姿勢が重要です。特に各分野に最低限の得点基準が設けられているため、全体の正答率が高くても、ある科目が極端に低いと不合格となる場合があります。過去の合格率は例年30~40%程度とされ、国家試験の中でも中程度からやや難易度の高い試験といえます。したがって、単なる暗記ではなく、法令の趣旨や現場での適用場面を理解しながら学習を進めることが合格への近道となります。
7.合格後の流れと研修
試験に合格すると、運行管理者資格証の交付を受けることが可能になります。ただし、それだけでは資格を活かせるわけではなく、所属する事業所において正式に「運行管理者」として選任される必要があります。選任後は、運行前点呼や運行計画の作成、運転者への指導、安全管理に関する業務を実際に遂行することになります。また、資格取得後も定期的な研修や高度化講習を受講する仕組みが設けられており、常に最新の知識と技能を維持することが求められています。
8.資格取得のメリット
運行管理者資格を取得することには大きなメリットがあります。まず、事業用車両の安全運行を担保する責任者としての役割を果たせるため、職場内での地位や信頼性が高まります。さらに、試験範囲には多くの関連法規が含まれており、体系的に学習することで法令遵守やリスク管理能力が飛躍的に向上します。物流や旅客輸送業界では資格保有者の需要が高く、就職や転職、キャリア形成において強力な武器となります。また、CBT方式や全国会場での実施、柔軟な日程設定により、社会人でも受験しやすい点も魅力です。
9.まとめ
運行管理者試験は、貨物または旅客輸送における運行管理の中核を担う人材を育成するための国家試験です。受験には実務経験か基礎講習修了のいずれかが求められ、年二回、全国各地で実施されています。試験は法律や運行管理実務に関する幅広い知識を問うものであり、合格後は資格証の交付と事業所での選任を経て実際の管理業務を担います。資格を取得することで安全運行の確保に寄与するとともに、キャリア上の大きな強みを得ることができます。輸送の安全を支える重要な国家資格であり、業界での活躍を目指す方にとって挑戦する価値の高い試験といえるでしょう。
10.ホームページ
公益財団法人 運行管理者試験センター

