医師国家試験
1.医師国家試験とは(試験概要)
医師国家試験は、厚生労働省が医師法に基づいて毎年実施する国家試験で、日本で医師として医療行為を行うために必ず合格すべき試験です。合格後に免許が交付され、医師としての業務が法的に認められます。出題は医学の基礎から臨床、公衆衛生まで幅広く、医師に必要とされる知識と技能の評価が目的です。
医師国家試験の特徴として「禁忌肢」があります。禁忌肢とは、医療安全や倫理の観点から絶対に選んではならない誤答選択肢のことです。患者の生命を危険にさらす判断や、医師として不適切な対応を示す選択が該当します。禁忌肢を一定数以上(例えば3問以上)選ぶと、総得点が基準を満たしていても不合格となります。
2.受験資格
主な受験資格は以下の通りです
学校教育法に基づく大学医学科を修了し卒業した者、または卒業見込みの者(臨床実習前に共用試験合格者含む)
医師国家試験予備試験に合格し、さらに 1年以上の診療・公衆衛生に関する実地修練を経た者
海外の医学校を卒業・医師免許を取得し、厚生労働大臣により同等以上の能力と認められた者
3.試験日程(例年のスケジュール)
試験日:2月上旬の2日間
合格発表:3月中旬
4.試験地
試験会場は 全国12都道府県に設けられ、受験者は自分の最寄り会場(大学やホテルなど)に割り当てられます。具体的な実施地は以下の都道府県です:
北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、石川県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県
東京都には受験者が集中するため複数会場が設けられることがあります。
5.受験手数料
15,300円
6.試験内容(詳細)
出題形式・構成
多肢選択式・マークシート方式であり、出題総数は400題です。
本試験は、必修の基本的事項・医学総論・医学各論の領域にわたる、以下の内容が出題されます。医学総論と医学各論では、一般問題と臨床実地問題(患者の具体的な症例を提示し、診断や治療方針、検査などに関する臨床的な思考力や問題解決能力を問う問題)が出題されます。
【必修の基本的事項】
1.医師のプロフェッショナリズム 2.社会と医療 (中略) 17.生活習慣とリスク 18.一般教養的事項
【医学総論】
Ⅰ 保健医療論 Ⅱ 予防と健康管理・増進 Ⅲ 人体の正常構造と機能 Ⅳ 生殖、発生、成長、発達、加齢 Ⅴ 病因、病態生理 Ⅵ 症候 Ⅶ 診察 Ⅷ 検査 Ⅸ 治療
【医学各論】
Ⅰ 先天異常、周産期の異常、成長・発達の異常 Ⅱ 精神・心身医学的疾患 Ⅲ 皮膚・頭頸部疾患 Ⅳ 呼吸器・胸壁・縦隔疾患 Ⅴ 心臓・脈管疾患 Ⅵ 消化器・腹壁・腹膜疾患 Ⅶ 血液・造血器疾患 Ⅷ 腎・泌尿器・生殖器疾患 Ⅸ 神経・運動器疾患 Ⅹ 内分泌・代謝・栄養・乳腺疾患 Ⅺ アレルギー性疾患、膠原病、免疫病 Ⅻ 感染性疾患 13 生活環境因子・職業性因子による疾患
問題数の内訳は以下の通り(合計400問)です。
| 一般問題 | 臨床実地問題 | |
|---|---|---|
| 必修関題:100問 | 50問 | 50問 |
| 医学総論:150問 | 100問 | 100問 |
| 医学各論:150問 |
合格基準:
○必修問題、必修問題を除いた一般問題・臨床実地問題の合計の得点と、禁忌肢の選択状況をもとに合否が決定されます。
○必修問題の合格基準は絶対基準を用いて最低の合格レベルを80%とし、必修問題を除いた一般問題・臨床実地問題の合計得点の合格基準は平均点と標準偏差とを用いた相対基準が用いられます。
7.合格後の流れと研修
合格後には厚生労働省から 医師免許 が付与されます。
続いて、2年間の初期臨床研修(医師臨床研修制度) が義務づけられており、診療スキルや実践的能力を高めます。
初期研修修了後は、後期研修や専門研修、専門医取得など、キャリアパスが広がります。
8.資格取得のメリット
医師国家試験に合格し医師免許を得ることは、日本の医療制度において医療行為の法的根拠となります。
合格率は例年 約90%前後 と比較的高いものの、医学部入学から国家試験までの長期間・高難度の学修を経た者が受験するため、取得の価値は極めて高いものがあります。
免許取得後は、医療職としての責務を果たすだけでなく、公共医療、専門医、研究、行政、国際医療など多様な進路が開かれます。
9.まとめ
日本の医師国家試験は、大学医学教育の修了者を対象に 幅広い医学知識と臨床応用力を評価する、国家レベルの試験です。2日間にわたる400問の出題形式で、マークシート方式を採用しつつも、単なる暗記では対処できない事例分析や応用問題が増加傾向にあります。受験資格は医学部の卒業または予備試験+実地研修による特殊ルートが認められています。試験地は全国12都道府県に設置され、毎年2月上旬に実施されます。合格後は医師免許が交付され、初期臨床研修を経て専門医や公衆衛生医などさまざまな道を歩める、医学分野で最重要かつ国家資格としての重みを持つ試験です。











