情報処理技術者試験は1969年から実施されている経済産業省による国家試験であり、信頼度、また知名度の最も高い最大規模の情報処理試験として、多数の情報処理技術者の育成とその成果を生み出してきた。90年代に入ると時代の流れに沿い、情報システムの企画・設計・開発・運用・評価に関連する人材育成のみではなく、技術者教育、システムソフト及びマイコン応用システムの開発に関連する人材育成カリキュラムも改定され、さらに利用者側で情報化を推進する人材(システムアドミニストレータ)育成カリキュラムも作成されるようになった。
とくに着目すべき点は、利用者側の知識・能力を認定する初級システムアドミニストレータ試験の受験者が急激に増加していることだ。これは、システム開発に従事する人たちに限らず、企業内の様々な部門に従事する人たち(エンドユーザ)も、広く受験の機会を持つことができるようになったためで、企業内のOA化に伴い、「エンドユーザコンピューティング(EUC)化」が広く浸透してきたことの裏付けといえる。
さらにITの確立を目指し、創造的経済活力を生み出すためには、更なる情報化の推進が不可欠となっている。昨今の情報技術の革新により、ダウンサイジング、オープン化、ネットワーク環境などは著しい変化を遂げつつ前進している。これはユーザニーズの多様化を招き、情報処理技術者の役割を大きく変化させる源となっている。付加価値の高い有意義な情報化社会を築くために、高度な技術と専門的な能力を持つ高度情報処理技術者が必要不可欠である。通商産業省の産業構造審議会(情報化人材対策小委員会)は、このような環境に対応できる「情報化人材の総合的育成策」について平成5年5月に提言を行い、これを受け情報処理技術者試験制度の改革が実施された。
このような時代背景をふまえつつも現状では、IT革命の急速な進展に伴い、情報化投資は単なる企業活動における合理化の領域を越え、各企業にとっての戦略そのものとなりつつある。よって、現体制では情報技術と市場の変化の加速化などに柔軟に対応した出題内容の変更が厳しいとの判断から、情報化人材の見直しが余儀なくされ、情報システムにどのような立場から関わるかの定義をもとにして、既存の試験区分の改組・整理が平成12年度に行われ、新制度を平成13年度より施行している。 |